
SNSの登場によって、情報発信は企業からの一方通行ではなく、ファンとの双方向コミュニケーションの場へと変化しました。ユーザー自身が発信する“UGC(ユーザー生成コンテンツ)”は、今やブランドの信頼性や共感の源として、欠かせない存在になっています。
SNSキャンペーンも、フォロワー獲得や拡散のためだけのものではなく、ファンとのつながりを深めるための手段へと進化しています。この記事では、SNSキャンペーンの基本を整理しつつ、「リワード(賞品)がなくても盛り上がるUGC活用」の実例をご紹介します。中小企業や個人事業でも取り組める、共感ベースのSNS施策のヒントを探っていきましょう。
目次
SNSキャンペーンの目的とメリット
SNSキャンペーンは、ファンづくりやブランド浸透のために有効な施策です。具体的な目的やメリットとしては、以下が挙げられます:
- ブランドや商品の認知度拡大
- エンゲージメントの向上
- ファンの可視化・コミュニティ形成
- 売上や来店・問い合わせへの導線強化
- 継続的な発信のモチベーション創出
SNSキャンペーンの種類と特徴
中小企業でも実施しやすく、ユーザー参加型の代表的なSNSキャンペーンには次のようなものがあります:
- フォロー&リツイート/いいねキャンペーン:公式アカウントをフォローしてリツイートするだけ。参加ハードルが低く、投稿を拡散しやすい形式です。
- ハッシュタグ投稿型キャンペーン:指定のハッシュタグを付けて投稿してもらう形式。UGCを集めて可視化しやすくなります。
- フォトキャンペーン(視覚的商材に有効):写真を投稿してもらう形式。使用感や世界観を視覚的に伝えられます。
- 投票型キャンペーン(参加感を醸成):選択肢を提示して投票を募る形式。ユーザーが意思表示しやすく参加意欲が高まります。
- クイズ/アイデア募集キャンペーン(創造性を引き出す):知識やアイデアを投稿してもらう形式。ブランド理解と愛着を深める効果があります。
キャンペーンにかかる費用感と現実
SNSキャンペーンを外部に委託する場合、数十万〜数百万円に達することもあり、中小企業にとっては高いハードルになることも。そこで注目したいのが、「リワードを用意しなくても自然と盛り上がるUGC活用」です。
リワードなしでもUGCが生まれる!3つの活用モデルと実例
リワードがなくてもUGCが生まれるブランドには、“投稿したくなる空気”があります。ここでは、以下の3つのタイプに分けて事例をご紹介します。
任命型:角川書店「絵本アンバサダー」
角川書店では、育児中の親を対象に「絵本アンバサダー」を任命。Instagramを通じて絵本の読み聞かせや反応を投稿してもらっています。任命されたことによる特別感が投稿の動機になり、他のユーザーにとっても有益な情報としてUGCが機能しています。
- 特別感があることで“語りたくなる”動機に
- 絵本という日常の中のシーンと相性が良い
- 投稿が他のユーザーにとっても価値ある情報になる
共感型:にしき食品「#nishikiyakitchen」
にしき食品は、レトルトカレーなどを中心に展開する食品メーカーです。大量生産・低価格を優先する一般的なレトルト食品とは異なり、「レトルトとはいえ手抜きなしで作った本格派」をコンセプトに掲げています。そのため、実際に利用しているユーザーも、食卓の“ちゃんとしたご飯”として写真と共に紹介する傾向が強く、それが自然なUGCの流れを生んでいます。
特別なキャンペーンがなくても、「#nishikiyakitchen」の投稿が増えている背景には、この“本物志向”の商品力と、企業による丁寧なリアクションの積み重ねがあります。
- 手抜きではない“ちゃんとしたご飯”だからこそ、ユーザーも雰囲気を整えて投稿する
- 企業からのリアクションが次の投稿のモチベーションに
- 日常に溶け込んだ商品だからこその自然な投稿
世界観浸透型:上羽絵惣「#胡粉ネイル」
「胡粉ネイル」は、日本最古の絵具店として知られる上羽絵惣(うえばえそう)が展開するネイルブランドです。伝統色を活かした和の色合いと、それに呼応した風情あるネーミング、そして肌への負担が少ない安全性の高い成分で、幅広い世代から支持されています。
Instagramでは、こうした商品の魅力に共鳴したファンによるネイルアート投稿が活発に行われています。特に、公式が投稿する“ネイルレシピ”が創作意欲を刺激し、投稿が“作品”として成立するため、紹介されなくてもシェアしたくなる動機が自然に生まれています。
- 和の世界観とビジュアルの美しさがUGCを誘発
- 企業の発信がユーザーの創作を後押しする良循環ができている
- 投稿の内容が“作品”として成立するため、紹介されなくても投稿したくなる
成功に導く設計のコツ
UGC施策やSNSキャンペーンを成功させるためには、以下のポイントが重要です:
- 拡散力と熱量のバランスを取る
- 参加ハードルは“低すぎず高すぎず”に設計
- 報酬は“感情的リターン”も意識する(紹介される、リアクションされる等)
- 効果測定のKPIを事前に設定しておく
- 終了後のフォローや紹介で“次の投稿”につなげる
実施ルールと炎上対策
キャンペーン実施時は、プラットフォームごとのガイドライン遵守が必要です。
- X(旧Twitter)やInstagramの規約確認
- 不適切投稿への対応体制を整える
- 応募要項や著作権・転載の許諾ルールを明示する
まとめ
SNSは、ただの告知ツールではなく、“ファンと共に育つメディア”です。
リワードやプレゼントがなくても、共感や世界観、信頼関係を丁寧に育てることで、自然にUGCが生まれ、それが新たなファンを引き寄せる力になります。
- 家庭の食卓からUGCが生まれるにしき食品(共感型)
- 凝ったネイル作品が投稿され続ける胡粉ネイル(世界観浸透型)
- 特別感のある任命制度で語りを引き出す角川書店(任命型)
リワードに頼らずとも、共感ベースで盛り上がるSNS活用は可能です。まずは「投稿したくなる空気」をつくることから始めてみましょう。
次回は「企業アカウント運用術」をテーマにお送りします。
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